はじめに
経済系YouTubeチャンネル「ReHacQ(リハック)」に投稿された動画で、元TBSアナウンサーの国山ハセン氏が自身の渡米起業の実態を赤裸々に語り、大きな反響を呼んでいます。
本記事では、この動画の中で語られたビジネスや市場に関する主張を取り上げ、公開されている市場データや統計で「裏取り」を行いました。動画を見た方にも、まだ見ていない方にも、ビジネス判断の参考になるファクトをお届けします。
対象動画
タイトル:【高橋弘樹vs国山ハセン】赤字6,000万円!? 渡米起業も組織崩壊で大失敗!? 全部ぶっちゃけ赤裸々告白…
チャンネル:ReHacQ
動画リンク:https://youtu.be/6Wp5cCtzyEo?si=taWsT9kZ6lZatg-E
調査①:「AIはバブルではなく実用段階に入っている」は本当か?
動画での主張
国山氏はサンフランシスコでの体感として、AIは一過性のバブルではなく実用段階に入っていると語っていました。自身のビジネスでもClaude等のAIツールを活用し、少人数でレバレッジを効かせるモデルに転換している趣旨の話をしています。
データによる検証
■ 市場規模:急拡大が続く
生成AI市場は複数の調査機関が大幅な成長を予測しています。MarketsandMarkets(2026年3月発表)は、2025年の約713.6億ドルから2032年には約8,905.9億ドルへ拡大すると試算しており、年平均成長率は約43.4%です。Gartner(2025年3月発表)は、GenAI関連支出が2025年に6,440億ドルに達し、前年比76.4%増になるとの予測を公表しています。
■ 企業導入率:急速に上昇
McKinsey & Company「The State of AI 2025」(2025年11月発表、約2,000名対象のグローバル調査)によれば、AIを少なくとも1つの業務機能で導入している企業は全体の88%に達し、生成AIの利用も72%に上昇しています。ただし、企業全体でスケーリング(本格展開)に至っている組織は約3分の1にとどまり、EBITへの大きな影響を報告できる「AIハイパフォーマー」はわずか約6%という結果も示されています。
■ 主要プレイヤーの動向
Global Market Insights(2026年1月発表)によると、2025年時点の生成AI市場シェアはOpenAIが約23.6%でトップ。上位5社(OpenAI、Anthropic、NVIDIA、Adobe、Microsoft)で合計約58.1%を占めています。Claude開発元のAnthropicは2026年2月に300億ドルの資金調達ラウンドが報じられるなど、急速に存在感を高めています。
結論
概ね妥当。企業導入率88%、市場規模の急拡大は「バブルではなく実用化」の主張を裏付けます。ただし本格展開に至っている企業はまだ一部であり、「完全に実用段階」とは言い切れない面もあります。
出典:MarketsandMarkets “Generative AI Market Report 2025-2032″(2026年3月)/Gartner “Forecast: GenAI IT Spending 2023-2028″(2025年3月)/McKinsey & Company “The State of AI 2025″(2025年11月)/Global Market Insights “Generative AI Market Size & Share”(2026年1月)
調査②:「自動運転は間違いなくトレンド」は本当か?
動画での主張
国山氏はサンフランシスコでの生活体験をもとに、自動運転が確実なトレンドであると述べていました。将来的にはこうした最先端情報を活かしたエンジェル投資家を目指す野望にも触れていた模様です。
データによる検証
■ Waymoの急拡大:数字が物語る成長
Alphabet傘下のWaymoは2026年3月時点で、全米10都市で週50万回の有料乗車を達成しています(TechCrunch、2026年3月報道)。これは2024年5月の週5万回からわずか2年で10倍に成長した計算です。2026年末までに週100万回を目標としており、さらに東京・ロンドンへの国際展開も計画されています。
■ 競争環境
一方で、GM傘下のCruiseは2023年10月の歩行者接触事故を機にサービスを停止し、その後も事業を再開できていません。Teslaは2025年半ばからオースティンとサンフランシスコ湾岸エリアで安全運転者同乗型のロボタクシーサービスを開始しましたが、規模はWaymoに大きく劣ります。Amazonの自動運転子会社Zooxも2026年に有料化を目指すと発表しています。
■ サンフランシスコ住民の支持率
Yahoo Finance(2026年1月報道)によると、サンフランシスコ住民のロボタクシーへの支持率は2023年の44%から2025年半ばには67%に上昇しています。「サンフランシスコ在住者が自動運転をトレンドと実感する」のは、日常的にWaymo車両を見かける環境から自然なことと言えます。
結論
妥当。Waymoの週50万回乗車という実績は、自動運転が実用交通手段として定着しつつあることを示しています。ただし、Cruiseの撤退やTeslaの事故率に関する指摘もあり、業界全体が順風満帆とは言えません。
出典:TechCrunch “Waymo’s skyrocketing ridership in one chart”(2026年3月)/Wikipedia “Waymo” (各種報道の統合情報)/Yahoo Finance “Why 2026 could be Waymo’s year”(2026年1月)
調査③:「VC資金調達は困難」「大半のビジネスは自己資金でやるべき」は本当か?
動画での主張
国山氏は渡米前に何十社ものVCにピッチ(プレゼン)したが資金調達できなかったと語っていました。また、高橋氏はVCに頼る起業スタイルに対して批判的な見解を示し、大半のビジネスは自己資金でやるべきという趣旨の持論を展開していました。
データによる検証
■ 日本のスタートアップ投資環境
スピーダ「Japan Startup Finance」レポートによると、日本のスタートアップ資金調達総額は2024年が約7,793億円(デット除く、前年比3%増でほぼ横ばい)、2025年上半期は3,399億円(前年比4%増)と堅調に推移しています。しかし投資家の選別姿勢は強まっており、「実績を示せる企業には資金が集まる一方、それ以外は厳しい」という二極化が鮮明になっています。
また、VCファンドの設立額は2024年に前年比60%減の3,870億円に急落しており、VCの投資余力そのものが縮小する構造変化が起きています。
■ メディア系スタートアップの厳しさ
日系VCへのアンケート調査(TECHBLITZ、2024年12月)でも、投資家はAI・ディープテック領域に注力する傾向が強まっていることが報告されています。メディア・コンテンツ領域への投資は相対的に冷え込んでおり、国山氏のような映像メディア系スタートアップがVC資金調達に苦戦した背景はマクロデータと整合します。
結論
概ね妥当。2023〜2025年の投資環境は選別的で、特にAI以外・メディア系スタートアップにとっては厳しい状況でした。ただし高橋氏の「VC不要論」はあくまで一つの経営哲学であり、急成長を目指すスタートアップにとってVCが有効なケースも当然あります。
出典:スピーダ「Japan Startup Finance 2024」(2025年1月)/スピーダ「Japan Startup Finance 2025上半期」(2025年7月)/スピーダ「Japan Startup Finance 2025(通年速報)」(2026年1月)/TECHBLITZ「日系VCが振り返る、2024年のスタートアップ投資動向」(2024年12月)
調査④:「LAの家賃が月5,000ドル(約80万円)」は妥当か?
動画での主張
国山氏はビザ取得のためにロサンゼルスに家を借りたが、家賃が月5,000ドル(約80万円)と非常に高額だったと語っていました。これがキャッシュ流出の一因になったようです。
データによる検証
■ LA・SF家賃水準
Zillow/Zumperなどの不動産データによると、ロサンゼルス都市圏の家賃中央値は月額約2,800〜3,200ドル(一般的なアパートメント)。しかし、ウェストサイド(Santa Monica、Beverly Hillsなど)の一戸建てや高級コンドミニアムでは月5,000ドル以上が一般的な水準です。
■ 為替レートの検証
2024年のドル円レートは概ね145〜155円で推移し、一時160円に達する場面もありました(日本銀行統計)。5,000ドルは約72.5万〜80万円に相当し、「約80万円」は為替が円安に振れたタイミングでの換算として妥当です。
結論
妥当。LA高級エリアの一戸建て・コンドミニアムとして月5,000ドルは十分ありうる水準であり、「約80万円」の円換算も為替レート次第で正確な範囲内です。
出典:Zillow “Observed Rent Index”(2024年通年データ)/Zumper “National Rent Report”(2024年)/日本銀行「外国為替市況」(2024年)
調査⑤:月額8,000円のオンラインコミュニティは相場として妥当か?
動画での主張
国山氏は月額8,000円のオンラインコミュニティ「アンノーン・メンバーズ」を運営していると語っていました。当初は週13本の限定動画を提供する計画だったが持続できず、現在は週1回の生配信をメインにする形に変更したとのことです。
データによる検証
■ クリエイターエコノミー市場
Goldman Sachs(2023年4月発表)は、クリエイターエコノミー全体の市場規模が2027年に約4,800億ドルに達すると予測しています。日本国内でもオンラインサロン・有料コミュニティ市場は拡大傾向にあります。
■ 価格帯の比較
DMMオンラインサロンやCAMPFIRE Communityなどのプラットフォームでは、ビジネス・投資系のコミュニティは月額5,000〜30,000円の価格帯が多く見られます。月額8,000円はこのカテゴリの中で標準的な水準です。
■ コンテンツ量の持続可能性
「週13本の限定動画」が持続できなかったという話は、個人クリエイターの運営においては想定しうる課題です。一般に有料会員を安定的に維持しているクリエイターは週1〜3本程度のコンテンツ提供が多く、週13本は業界水準から見ても極めて多い設定でした。
結論
妥当。月額8,000円はビジネス系オンラインサロンの標準的な価格帯であり、週13本→週1回への変更は個人運営の現実を踏まえた合理的な調整です。
出典:Goldman Sachs “The Creator Economy Could Approach Half-a-Trillion Dollars by 2027″(2023年4月)/DMMオンラインサロン各サロン価格帯(公開情報)
まとめ:主張 vs データ 一覧表
| 動画内の主張 | データとの整合性 | 補足 |
|---|---|---|
| AIは実用段階に入っている | ⭕ 概ね整合 | 企業導入率88%・市場急拡大。ただし本格展開は一部 |
| 自動運転は確実なトレンド | ⭕ 整合 | Waymo週50万回乗車。ただしCruise撤退等の課題も |
| VC資金調達は困難だった | ⭕ 整合 | 投資家の選別強化・メディア系は特に厳しい環境 |
| LAの家賃が月5,000ドル | ⭕ 妥当 | 高級エリアの相場範囲内。円換算も妥当 |
| 月額8,000円コミュニティ | ⭕ 相場範囲内 | ビジネス系サロンの標準的価格帯 |
調査の裏側:こうしたレポートを効率的に作るには
今回の調査では、市場規模データ、競合動向、技術トレンド、政策動向といった複数領域の情報を横断的に収集・整理しました。こうした「テーマを決めたら関連情報を網羅的に集めて構造化する」作業は、人手で行うと膨大な時間がかかりますが、AIとデータ活用基盤を組み合わせることで大幅に効率化できます。
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「AI × YouTube 調査ノート」とは
経済系YouTubeチャンネルの動画で語られた内容を、AIを活用して公開データで検証するシリーズです。動画を見た方にも、見ていない方にも、ビジネスの判断材料として使えるファクトをお届けします。

